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2016/4/22

どうなる?!2016年夏

日本の天候に影響を与える海域の状況

<ペルー沖海水温>
ペルー沖では2014年夏よりエルニーニョ現象(海水温が平年に比べて高い状態が続く現象)が発生していました。気象庁が4月11日に発表した最新の『エルニーニョ監視速報』によりますと、現在発生中のエルニーニョ現象は、今後弱まりながら今年夏のはじめには終息している可能性が高く、またその後、夏の間にラニーニャ現象が発生する可能性があることを示唆しています。

<インド洋海水温>
現在、インド洋熱帯域の海水温は高い水準となっており、今秋に向けて徐々に平年並みに向かいますが、今夏までは高めで推移する予想となっています。インド洋熱帯域の海水温が高いと、近接するフィリピンの周辺の対流活動に作用し、それが太平洋高気圧の勢力の張り出しを弱め、日本の夏の天候不順につながる傾向があることが過去の研究によって示されています(図1)。

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今年の夏1998年のトレンドに酷似?

 近年、エルニーニョ現象が終息したあとすぐにラニーニャ現象が発生するというトレンドを示した年が3回あります。それは、1988年、1998年、2010年です。この3例について、より詳しく解析したところ、ペルー沖やインド洋の海水温動向が最も類似しているのが1998年でした。
 1998年夏は、一言でまとめると「北冷西暑」の気温分布で、北陸及び東北南部、東北北部では梅雨明けの発表がなく、西日本太平洋側や南西諸島を除いて全国的に日照時間が平年より少なくなりました(表2)。また、北日本中心に雨が多く、8月は秋雨前線や台風の影響で、福島・栃木・新潟などで記録的な大雨による被害も発生しました(平成10年8月上旬豪雨、平成10年8月末豪雨)。秋は全国的に気温が高めとなったものの、台風が5号、7号、8号、10号と立て続けに上陸し、活発化した秋雨前線の影響もあり、各地で記録的な大雨や暴風になりました。

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今夏の傾向は?

  類似年である1998年の夏の天候推移から今夏について考察すると、南西諸島~東日本にかけては猛暑傾向ということができます。気象庁が2月に発表した暖候期予報と矛盾しませんが、実際には南西諸島で晴れる日が多いほかは、全国的にぐずつきやすく「夏空で猛暑」というより「くもりや雨で蒸し暑い」という地域が多くなることが考えられます。
 ちなみに、1998年以外に傾向が近いとして例を挙げた1988年及び2010年の天候実績についても簡単にまとめておきます。1988年は南西諸島で高温傾向だったものの、それ以外の地方では低温傾向でした。温暖化が進んでいること、ここ数年の研究報告の中で地球温暖化の再加速が始まる可能性が示唆されることなどから今夏の全国的な冷夏の可能性は低いと考えられますが、考慮しておく必要があります。一方、2010年は「戦後最も暑い夏」といわれたように全国的に記録的な猛暑となりました。太平洋高気圧の北への張り出しが予想よりも強く、またオホーツク海高気圧が何らかの原因によりあまり発達しない状況となった場合には全国的に猛暑の可能性もあります。

引き続き4月25日、5月25日、6月24日に気象庁から発表される3か月予報で情報をアップデートしながら今夏の商戦に向けて手配いただければと考えます。


お天気コラム関連リンク
今夏(2016年)の天候と商品販売の傾向予測について

取締役 ビジネス気象研究所 所長 常盤勝美

流通気象コンサルタント・気象予報士・健康気象アドバイザー・IPCCリポートコミュニケーター

tokiwa.png・流通気象コンサルティングのスペシャリスト
・コンビニ、スーパーマーケット、ドラッグストア、ホームセンター
 外食チェーン、アパレル、食品メーカー等に対して、データ解析や
 ウェザーマーチャンダイジングの指導をしている
・著書に「今日からできるウェザーマーチャンダイジング入門」
 (商業界:共著)
・講演実績、出演実績多数


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